メンタルヘルス
うつを持続させる思考のパターン?
うつ病に対しての治療法として、近年、日本でも認知行動療法が広まってきています。
認知行動療法には様々なものがありますが、最も有名なのがアメリカのアーロン・ベック博士が提唱したうつ病の認知療法(認知行動療法)です。
ベック博士はその著書の中で、うつ病を持続させる思考のパターンをいくつか挙げています。書籍によって多少パターンの種類に違いがありますので、ここでは『心がスッと軽くなる 認知行動療法ノート ー自分でできる27のプチレッスンー』を参考にご紹介します。
うつを持続させる思考のパターン
① 白黒思考
物事を白か黒かで考える、極端なものの見かた。
完璧主義に陥りやすく、「頑張っても、うまくいかない事もある」という現実が受け入れられなくなる。最初から努力を放棄して、わざと無気力にふるまうこともある。
心のつぶやき「仕事に関係ないから、やる意味がない」など
② 一般化のしすぎ
よくないことが一つでもあると、広く一般化して解釈してしまう。
たった一度の失敗でも「私はいつも失敗する」と考えたり、一度パニック発作を起こすと、他の場所に出掛けることも怖くなったりする。
心のつぶやき「私はいつも人から嫌われる」など
③ こころのフィルター
たった一つの良くないことにばかり目がいってしまう。
現実には1つくらいいいことがあるはずなのに、それにまったく目が向けられなくなる。
他人の言動についても、悪く解釈しがち。
心のつぶやき「仕事もできないし、友達もいない。私には良い所なんて何もない」など
④ 感情的決めつけ
理性ではなく、感情で物事を判断する。
ゆううつだと「自分にはもう何もできない」と感じ、不安が強くなると「きっと失敗する」と思いこんでしまう。
心のつぶやき「今日も気が重いし、外出なんてとても無理」など
⑤ すべき思考
「~すべきだ」「~でなくてはならない」というルールを作り上げ、頑なに信じ込む。
自分にも他人にもきびしくなり、怒りや緊張など、マイナスの感情にとらわれてしまう。
心のつぶやき「仕事は100%の力で取り組まなければならない」など
⑥ レッテル貼り
人や物事に対して極端なイメージのレッテルを貼り、それが真実かのように思いこむ。
他人に対して「あの人は嫌な人」というレッテルを貼り、その人の良い面が見えなくなる事も多い。
心のつぶやき「いつも怒ってばかりだから、あの人はきっとまた私に嫌なことを言う」など
⑦ 個人化
よくない事が起こると、自分の言動と関連付けて、自分を責める。
自分にはまったく関係のない出来事でも、罪悪感にさいなまれてしまう。
心のつぶやき「私がもっと面倒を見てあげれば、彼は会社を辞めずにすんだのに」など
⑧ マイナス化思考
全ての出来事にマイナスの解釈を加える。
「私の事が嫌いだから、連絡してくれないんだ」「今の部署には必要ない人間だから、異動させられたんだ」などと、悲観的なストーリーを勝手に作り上げてしまう。
心のつぶやき「私は話すのが下手だから、話を聞いてもらえないんだ」など
⑨ 結論の飛躍
根拠もないのに、自分にとって不利で、悲観的な結論に飛びついてしまう。
ちょっとでも悪いうわさを聞いたり、人との会話中に違和感を覚えたりすると、早合点して悪い結論を出す。
心のつぶやき「みんなは私のことを嫌っているんだ・・・」など
⑩ 拡大解釈&過小評価
自分の失敗や短所を大げさに考える一方で、成功や長所は「こんなこと、できてあたりまえ」と過小評価する。
自分を好きになれず、いつも落ち込むことになる。
心のつぶやき「趣味なんて一つもない。自分はなんてつまらない人間なんだ」など
まとめ
今回はうつを持続させる思考のパターンを紹介しました。ここに示したパターンはうつを持続させる、またはうつになりやすい思考のパターンと言われていますが、必ずしもネガティブな結果(気持ち)となるわけではありません。場合によってはポジティブな結果(気持ち)となることもあります。大切なのは自分の思考のパターン(クセ)に気づくこと。自分の思考のパターンに気づけると、少し冷静に、少し自分を客観的に見ることができます。日々の生活の中で自分の思考のパターンを振り返ることは難しいですが、「ちょっと疲れたな」「しんどいな」という時は一度振り返ってみてもいいかもしれません。
引用・参考文献:福井至・貝谷久宣(2015)『心がスッと軽くなる 認知行動療法ノート ー自分でできる27のプチレッスンー』ナツメ社